お知らせ
四次元ポケットを手に入れる方法
もうすぐ期末テストだ。
ネコ型ロボットのシールがぞんざいに張られたおさがりの勉強机では、集中できるはずもないし
暗記パンでも出してくれたら、明日の歴史のテストに関しては赤点を取らずに済むのに。
なんて思いながら彼らの事を考えていたらあっという間に一時間経っていた。
何時からこんなに勉強が嫌いになったのだろう。こんな調子で自分は将来何者になれるんだろう・・・
目の前のテストは受けたくないが、将来は輝くような物であってほしいと
矛盾する願い、今のままでは叶うわけがない事くらいは分かっている。
「いけないいけない。悲観的になってもしょうがないよな、とりあえず一時間経ったし、一度休憩して気持ちを切り替えよう…」
糖分を補給するため、キッチンをあさりに行く。休憩も自分を高める為の自己投資だ。
お菓子やパンが溢れそうなお宝箱を物色していると、珍しくどら焼きがあるではないか。
普段自分で買ってまでは食べないが、ちょうど彼らの事を考えて無駄な時間を過ごしてしまったという事もあり
今日は久しぶりにどら焼きで気持ちを切り替える事にした。
熱々のコーヒーもペーパードリップから拘って、注いで部屋に戻ると、すでに休憩時間の10分は過ぎていた。
「しょうがない、次の休憩分の10分を前借りという事にしよう。」
今回の休憩時間を延長し、どら焼きを一口頬張る・・・と
「これは…めちゃくちゃ美味いな!なんか中にあんこの他に…クリームが入ってる!」
「しかもクリームが、なんか、バター?塩?塩バター?分からないけどめちゃくちゃあんこと生地とマッチして美味い…」
ちょっとコーヒーを一口…
「合う合う!コーヒーと合う。こんなに美味いどら焼きがあったんだ…」
あっという間に完食して、残りの9分は幸せの余韻に浸っていた。
しかし美味かったな。このどら焼き、ネコ型ロボットの彼にも食べさせてあげたいなあ…
あんなにどら焼きが好きな彼なら、絶対やみつきになるだろう。
このどら焼きがあれば、ひみつ道具の使用権について交渉が出来る…これは面白くなるぞ…
母さんに一連の話をすると、自分の話には興味も無さそうにしながらも
「なんか伯方の塩が隠し味らしいよ、美味しいけど彼らには深ーい絆があるからね、あんたには無理よ、映画みたでしょう。」
「そんな事より勉強頑張ってね、」
そう言ってテレビドラマの世界に戻った。
うん、ほんとそろそろ勉強しよう。
でもその前にもう一つだけ食べよう…明日学校にも持っていこう。