
お知らせ
雨潸潸(あめさんさん) その7
ついにこの日がやってきた。
一月一日、バラマキの日だ。
俺は今日のために仕事以外にもジムでトレーニングを重ね、準備を重ねてきた。
一月一日、午前九時
では各階の今年の福男の皆さま、よろしくお願い致します。よーい、スタート!
各々の階の大画面広場、自宅のテレビなど一斉に放送が始まった。
一年で唯一、正月だけは地上一階から地下十階までのバラマキの様子がすべてライブ配信される。
他の365日は規制がかかり、ほかの階の様子は一切分からないのだ。
「みんな見てくれているだろうか…気合い入れていくぜ!」
最近練習を始めて分かったことがある。
この俺たちが住んでいる新日本は真ん丸な形をしており
大通りは五本しかない。
外周を一周して、大道りを道順に進むと、その軌道は星になるようになっており
そのど真ん中に新東京がある作りとなっていること。
新東京の周りは造海で囲まれており、船でしか移動できないこと。
新東京からのみ、別の階に移動できること。
しかし限られた人間しか、階の移動は許されていないこと。
いろいろな縛りがあるな。まあそんなことはどうでもいい。
他の階の福男よりも一番多くお年玉をばらまいてやる!
次の補充場所までにちょうどばらまき切れるように計算しながら、トップスピードでばら撒いていく
走れ、走れ、走れ、奔れ!
前だけを見て、駆けつづけた。
途中後ろから車が追跡してきた。テレビ局のカメラ車だろうか。
彼らを振り切るスピードで走ってやるぜ!
しかしカメラ車だと思っていた車はあっという間に俺をとらえて
俺の周りを包囲した。サイレンを鳴らしながら…
その日俺は逮捕された。福男の俺が…
プロローグ(雨潸潸) おわり
次回、晴燦燦(はれさんさん) スタート