
お知らせ
雨潸潸(あめさんさん) その5
届いた手紙は兄からの物だった。
「兄さんからの手紙なんて珍しいな。」
兄さんは几帳面だから、のり付けもきちきちにしてある。
ペーパーナイフなんてもってないので破って開けると、なんと来年の正月の「バラマキ」の一人に
俺が任命されたということだった。
「バラマキ」とは正月に政府からお年玉が出されて、
そのお年玉袋をその年選ばれた人が、いろいろな方法を使って多くの人々にばら撒くという行事で
昔の時代に合った「もちまき」の名残がある縁起のいいものなのだが、
これをばら撒く人間に選ばれるには、その年の間に何か大きな功績を残したり、結果を出して会社などから
推薦を受ける必要があるのだが、今回うちの会社からは俺が推薦されたようだった。
どうやら足漕ぎ式ロードバイクの発電量が年間でトップに近い成績で
それを見込まれてのことだった。
当日は俺が生活している地下八階を一日かけてロードバイクで走り回り、お年玉袋をばらまき続けるのだ。
この大仕事が終われば、俺は今年の福男としていい一年間が約束される。
兄さんからの手紙には堅苦しい筆跡で、一言のおめでとうと
当日は一番人が集まる神社からばら撒いて、そのあとは時間に間に合うようにとにかくたくさんばら撒け。
ルートは私が決めた通りに走れ。
と言って、丁寧にルートとお年玉袋の補充場所まで記されている地図が入っていた。
相変わらず几帳面な人だなあ。まあいいけど。
それにしても俺なんかが選ばれるなんて、ああ、正月がたのしみだぜ・・・
つづく